◆『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇(Jean Paul Gaultier: Freak and Chic)』鑑賞レポート◆

『ジャンポール・ゴルチェのファッション狂騒劇(Jean Paul Gaultier: Freak and Chic)』はファッションデザイナー、ジャンポール・ゴルチェが彼の幼少期からデザイナーとして成功するまでの半生をミュージカル化した「ファッション・フリーク・ショー(Fashion Freak Show)」を完成させる約2年間を追ったドキュメンタリー映画です。
ゴルチェが自ら演出と200着以上の豪華な衣装を手がけた「ファッション・フリーク・ショー」はオリジナルの音楽、ハイスタイルな振り付けで観客たちを魅了しました。
それは2018年のパリ公演で25万人、22年のロンドン公演では30万人を動員する大ヒットを記録し、23年5月には日本でも公演が行われました。
制作過程を記録したドキュメンタリーはその結果である「ファッション・フリーク・ショー」を観たか観てないかによって、かなり評価が分かれそうです。
しかしながら、映画『ジャンポール・ゴルチェのファッション狂騒劇』はミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」の完成された舞台映像を使用していて、それを観ていないものも楽しめる様になっています。
また、舞台を観た方も楽屋シーンでダンサー達が身に着ける衣装に至近距離で迫った細かく施されたスパンコール刺繍や、貴重な羽毛の重ね合わせられたグラデーションに新たな発見をするでしょう。
何よりもシャイなゴルチェ本人による各シーンの解説は、リアリティーと強いメッセージ性とエスプリに満ちていてそれだけで、この映画の価値を決定づけています。
冒頭、口で説明するのが苦手というジャンポール・ゴルチェはあのシャープでドラマティックなタッチの大量の絵コンテを携えて音楽を担当するナイル・ロジャース(Nile Rodgers)の自宅を訪ねます。
ナイル・ロジャースはファンク、ディスコバンド、シック(Chic)で1977年にデビューし、1980年代にデビッド・ボウイ(David Bowie)、マドンナ(Madonna)、デュラン・デュラン(Duran Duran)等のプロデュースを務め、当時の音楽シーンを創ったミュージシャンです。
世界最高の音楽プロデューサーとファッションデザイナーは、思わぬところで意気投合します。
ナイル・ロジャースの自宅には彼の功績を称えるディスクや愛用の楽器に混じって、アメリカの黒人の初期のエンターテイナーたちのアールデコ調のポスターが飾られていました。
その中にゴルチェは、ジョセフィン・ベイカー(Josephine Baker)を見つけ、子供のように喜びます。
10代にブラックパンサー党に入党していたナイル・ロジャースにとって1960年代末まで、社会奉仕と黒人の地位向上の活動に勤しんだ彼女はスーパースターの一人に違いありません。
一方、ゴルチェは「ファッション・フリーク・ショー」で「フランスで最も成功したアメリカ人」にしてアーティスト達のミューズであった、彼女へのオマージュを捧げています。
ジョセフィン・ベイカーと同じく裸のダンサーはバナナの房を腰回りにスカート状に巻き付け、セクシーでワイルドに踊ります。
一本一本のバナナにはストーンがびっしりと貼り付けてあり、女性だけではなく、男性も同じスタイルにしているのはゴルチェならではの演出です。
半裸の黒人女性が未開のジャングルの象徴であるバナナだけを身に着けて、コミカルなダンスをすることは差別的と捉えられがちです。
でもゴルチェはそのような見方そのものが偏見であり差別的だと訴えてるかのように、純粋に裸体と衣装、躍動感の美を眼前に示し、観客を挑発します。
映画にはゴルチェファミリーとも言える、カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)、ロッシ・デ・パルマ(Rossy de Palma)ら多くの個性的な著名人が登場します。
そして、ポスターの撮影に向かったゴルチェを迎える写真家、ピエール・エ・ジル(Pierre et Gilles)のキッチュでビザールなスタジオはタトゥーだらけの二人からは想像出来ないあのスイートなムードを醸し出しています。
また、劇中映像の為に呼ばれたゴルチェの祖母役のミシュリーヌ・プレール(Micheline Presle)は舞台の共同演出を行うトニー・マーシャル(Tonie Marshall)の母です。
ミシュリーヌ・プレールはレーモン・ラディゲ(Raymond Radiguet)原作のベストセラー『肉体の悪魔(Le Diable au corps)』で高名なジェラール・フィリップ(Gérard Philipe)相手に映画で演じた俳優です。
久しぶりにカメラの前に立った往年の俳優はみるみるうちに、即興で威厳と妖艶さを表現し、ゴルチェと娘を喜ばせます。
トニー・マーシャルは2020年に亡くなったので、これは親子にとって特別なシーンになっています。
映画の中のゴルチェは専制君主のようなデザイナーではなく、コラボレーションするアーティスト達に敬意を払い、スタッフの提言に耳を貸し、時には無理をさせたダンサーに潔く謝罪します。
彼のその姿勢が作品をより良く発展させ、完成されていく様が描かれています。
彼は自嘲気味にこう言います、「みんなは僕を好きな訳ではなく、僕の作品が好きなのだ。でも、それが楽しい」。
そして幾度なく繰り返されるあのメッセージ、「違いとは特別であることだ。誰もがフリーク。美は至るところにある。」と。
弊店は縁あって、ジャンポール・ゴルチェブランドの初期から国内のあらゆる展開に関わってきました。
彼自身の名前を冠したブランドだけでなく、多岐に渡る彼の作品を世界で最も取り扱ったブティックです。
ゴルチェのオンリーショップからセレクトショップへと展開した現在でも、セレクトのベースとなる価値観はジャンポール・ゴルチェによって培われています。
また、依然として世界的に貴重なジャンポール・ゴルチェのアーカイヴスも多く保有しています。
余すことなく作品を御覧頂き、そのテーマ、由来、特徴、影響力を御説明させて頂く事が出来ます。
ジャンポール・ゴルチェと共に歩んできた弊店ならではの成せる業です。
『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇(Jean Paul Gaultier: Freak and Chic)』を観た方もそうでない方も、一度弊店に足を運んで頂ければ、幸いです。
スタッフ一同、御待ち申し上げております。
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